第1回 竹葉所長のガン闘病記 ~がんと闘う人へ~

 「がんですよ」
 ひざをつき合わせた状態で医者が言った。それは、35度の暑さにへばりそうだった8月6日のことだった。
 自分・竹葉俊雄は、江戸川区にある瑞江店の所長として勤務し、新聞配達は毎日行っていた。新聞業界歴は15年を超え、昔は5階建のマンションも階段を駆け上がって配達していたくらいだから、体力にも健康にも自信があった。健康診断を年に2回必ず受けているけど、これまで注意を受けたことなんて一度もないような、そんな普通の生活を送っていたんだ。
 でも、少し前から「……おかしいな?」って予兆はあった。7月初旬から微熱が続いて、熱さましをずっと飲んでいたのに熱は引かず、食欲は落ちる一方。気づいたら体重が8キロも落ちてた。そしたら中旬に健康診断の結果が来て再検査の文字があって、病院の紹介状が同封されてた。すぐに再検査に行ったこの時に「どうやらただ事じゃないぞ」と感じた。
 検査をしてから1週間後の8月に結果を聞きに行った。その時に医者から初めて自分が「がん」だと告げられた。「深刻ですか」と聞いたら医者は「深刻です。早く治療を始めましょう」と言ったが、自分は頭が真っ白になって、「がん=死」としか思えなかった。
 胸のレントゲンしかなくて精密検査をしないと分からない、と前置きされたうえで告げられた病状は「肺がんのステージ2後期」ということだった。
 すぐに精密検査が必要なのに、お盆直前のこの時期、都内の病院は予約がいっぱいで、早くても3週間後と言われた。そんなに待たないと検査も受けられないのか?
 呆然とする自分の横で医者が携帯を使って連絡をし出した。後に主治医となるこのN先生は、実は千葉県の病院から出向して来てて、月に数日だけ都内の病院の外来を担当しているそうだ。
 N先生が所属の病院に相談すると、2日後に検査が出来るとの返事が!
「鴨川まで来ますか」「行きます。鴨川ってどこですか」「千葉県です」「行きます」
 鴨川がどこにあるかも知らなかったけど、この時は、「どこだろうと行くしかない」って気持ちしかなかった。
(文・坂本みゆ)