連載記事「神社仏閣巡りの旅 〜トライベルライター河越理恵の旅行手記〜」第49回



今回はちょっと変化球ですが、ある護符をご紹介します。京都を旅行していた時、玄関でよくみかけていたので調べてみると、かなり興味深い護符であることを知り、それから私もお世話になっています。一度見ると忘れられないようなインパクトのあるものなのでご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。

この護符は、平安時代に実在した比叡山延暦寺を発展させた偉いお坊さん良源(りょうげん)さまが鬼に変身した姿「角(つの)大師」です。(良源さまは、一月三日にお亡くなりになったことから、元三(がんざん)大師とも呼ばれています)

伝承によると、都で疫病が蔓延した際、良源さま(七三才)は、人々を救おうと鏡の前で瞑想をします。するとお体の中に疫病神が入り込み、鏡の中のお姿がみるみる痩せ細り鬼に変身しました。良源さまは、この姿を弟子に描かせ、それを見ると、版木して都の家々に配布し、玄関に貼るよう命じます。疫病が猛威を振るう中、この護符を貼っている家だけは難を免れ、また病気を患っていた人々もほとんど全快し、恐ろしい疫病もたちまち消え失せたと言い伝えら、以来、民衆はこれを「角大師」と讃え、現在でも魔除けはもちろんですが、あらゆる災難を払う護符として広く信仰されています。良源さまは、このほかにも数々の伝説、伝承があり、それらは「角大師」をはじめ、複数の護符となり、令和となった今も天台宗の寺院で授与されています。(現在、状況を考慮し、直接参拝できなくても、郵送で対応しているとこともあります)

 昨年ブームになった「アマビエ」よりもはるか昔から、この「角大師」は存在していました。長い歴史の中で、姿を変えることなく、疫病退散を祈願する人々を救ってきたのでしょうね。

不安定な社会情勢が続く中、新型ウイルスによる混乱が、一日も早く収束しますように願っています。文・河越理恵

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