第5回 街の新聞販売所長に聞く

駒込西ヶ原SC 山口文丈所長

JR山手線と、東京メトロ南北線の駒込駅の南口から左側に出ると、信号を渡ったすぐ先に都立庭園・六義園がありますが、右側に出て10分ほど歩くと、同じく都立庭園の旧古河庭園があります。
 旧古河庭園は和の庭園だけではなく西洋庭園があり、10月中旬からはバラが見ごろとなっています。そんな旧古河庭園から本郷通りを隔てたところにあるのが、駒込西ヶ原SCです。
 所長の山口さんは、奈良県で生まれ育ちました。イラストを描くのが好きで、デザイン関係の専門学校を卒業したのち、最初は広告関係の会社に就職されたのです。
 ですがある日、東京で就職したご友人が帰省してお酒を酌み交わした際に「お前も東京に来いよ」と誘われ、挑戦したい気持ちがあった所長は勢いに任せて上京しました。初めて住んだのは渋谷区の笹塚。ですがご友人宅に居候をさせてもらっていたので、しばらくして杉並区の東高円寺に引っ越しました。

 この時、他紙の新聞販売店に勤務したのが新聞業界に入ったきっかけです。いつの間にか20年の時が過ぎ、勤めていたお店で産経新聞も扱っていたので付き合いが出来て、紆余曲折あり産経新聞の所長として独立。40代後半に初めて持った自分の店が、このお店です。かつてお世話になった方から「店が安定するまでに3年はかかる」と言われたのを、3年を超えた今、実感しています。
 現在は、駒込の地域だけでなく北区尾久方面も担当されています。近々退職される方がいるので、所長も配達に加わると、通常業務に影響が出るかもしれず、だからといって従業員さんにお願いしたらプライベートな時間を減らしてしまう……。悩みどころです。一番の改善方法は新しい方が入ってくれたらと考えているそうなので新たな出会いがあると良いのですが。
 所長は、他紙の販売店時代は地域の消防団に参加したこともありましたが、消防団は定期的に大きなイベントがあるため、参加していると所長の業務が停滞するからと今は断念されているとのことでした。
 普段も、お客様から連絡があったらいつでも駆けつけられるよう、特に用事がなければ担当区域からは出ないように気を付けていると仰っていました。
 では、日々の息抜きは? とお聞きしたら、少し考えて、昔は古銭や切手を集めるのが好きだったと話して下さいました。小さくて数が少ない、希少なものを見るとワクワクしてくるそうです。それは今も変わらず、「亡くなった主人の物だけど」とお客様の老婦人から頂いた飛行機の形をしたバッチや、古い新幹線を正面から見て、「鼻」と呼ばれた円い部分が真珠になっている小物など、ときどき眺めて楽しんでいるとのことでした。
最近では刀剣にも興味があって、「武家のお姫様の脇差し(短刀)の、柄が凝ったものなんかいいですね」と笑っていました。
 駒込付近は建設中の新築マンションが多い地域です。お客様と話していると、「夕刊は読んでない」という方も多いようで、これからは夕刊がないことがハンデではなく、「購読費用が安い」ことが武器になってくると、ちらりと今後の戦略も覗かせてくださいました。
(取材・坂本みゆ)

店舗情報/産経新聞 駒込西ヶ原SC
〒114-0024 北区西ケ原1-11-1
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