第5回 竹葉所長のガン闘病記 ~がんと闘う人へ~

 これは瑞江店所長の自分・竹葉俊雄が、肺がんと闘った記録である。
 10月17日に手術を受けた。当日までは本当に怖くて、夜は眠れないし泣いてばかりだったのに、終わった翌日から主治医のN先生に歩行練習をやるよう言われた。何ヶ所も付けられてたチューブ類も、その次の日には「取っちゃいましょう」って軽く言われて、自分は術後3日で何も付いていない状態にされて、一般病棟に移った。
 でも右胸から背中にかけて大きく切開されてたから体中痛いし、右手が全然上がらないからスプーンもフォークも持てない。左手なんて普段全然使ってないから食事が大変だった。自分の人生の中で左手が主役を務めたのはこのときが初めてだった。
 近くの病室に同じ日に手術した人がいてね。「手術室で会いましたね」なんて話したんだけど、その人はまだチューブを付けた状態だったから、自分がもう何もつけてなくて普通に立って歩いてて、退院日も決まったって言ったら「えーっ!」って、すごく驚かれた。自分でも「退院して大丈夫なのか?」って不安は消えなかった。
 退院前日に、抜糸ならぬ抜針(ばっしん)があった。傷口は縫わずに、ホチキスの針みたいなので留められてたんだ。これを抜いたのを数えてみると全部で75針もあって、プロレスラーみたいだって驚いたね。
 手術から9日経って、退院の日が来た。家に戻るとき、ほとんど左手だけでハンドルを握って自分で山道を運転して帰ってきた。悪戦苦闘したし傷は痛かったけど、家に近づくにつれて「終わったな」って、少しずつホッとしていくのを感じてた。
 術後1ヶ月は筋力が衰えてて本当に大変だったけど、毎日を普通に過ごせるだけでうれしかったな。
 定期健診は東京駅の近くのクリニックに通って、N先生に再会した。異常なしって言われても不安で「痛み止めだけで大丈夫ですか?」って聞いたら、「薬欲しいの?」ってにやっと笑うんだよ。相変わらずいじわるだよね。月イチの検査は、N先生に「大丈夫ですよ」って言ってもらうために通ってた。
 そう言えば、がん保険、めちゃくちゃ大事だよ! 保険代理店さんに「僕の年齢に見合う保険にしといて」って任せてたら、がん保険を付けてくれてて、助けられたな。
 文・坂本みゆ