連載記事「写真で振り返る下町の歴史」第二回

 

江戸川区の「葛西海岸」は、現在は葛西臨海公園や葛西臨海水族園などがある一帯です。かつては東京湾に面した「浅瀬の海岸」でした。今回は現在のように埋め立てられた背景やその歴史について写真と一緒に紹介します。
葛西一帯は江戸時代から昭和初期まで、漁業と海苔養殖が盛んな地域で、「葛西沖」は特に江戸前の漁場として知られ、アサリや海苔などが採れ、漁師町の風景が広がっていました。海岸は干潟や浅瀬が広がる自然海岸で、鳥類や貝類の宝庫でした。


1950年代後半、高度経済成長に伴い、東京都は工業用地や住宅地の確保、ゴミ処理場の用地確保を目的に東京湾の埋め立てを加速、葛西海岸も対象となり、昭和30年代から埋め立てが徐々に進行します。1960年代後半、東京都は「東京港埋立処分場」を葛西地域にも設置、家庭ゴミや産業廃棄物が大量に運び込まれ、一帯が急速に埋め立てられていきました。埋め立てによって新しい土地が完成すると、東京都はここに**「葛西臨海公園」**などの整備計画をスターし、ゴミ処分場として使われていた部分は閉鎖され、土地の改良が行われました。

そして平成元年「葛西臨海公園」が開園し、ランドマークとなる観覧車や水族館が設けられました。葛西臨海公園、臨海水族園、鳥類園、人工浜などが整備され「自然と人間の共存」をテーマにした都市公園へと変貌、かつての漁村風景や海苔養殖の記憶は失われつつありますが、公園内の展示や碑にその歴史が残されています。

葛西海岸

住所:江戸川区臨海町

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江戸川画像文庫