連載記事「神社仏閣巡りの旅 〜トライベルライター河越梨江の旅行手記〜」第67回

 

 今回ご紹介するのは、渋谷区千駄ヶ谷にあります、貞観二年(八百六十年)創建の鳩森八幡(はとのもりはちまん)神社です。ここには【千駄ヶ谷の富士】と呼ばれる東京都の有形民俗文化財に指定されている富士塚が有名。富士塚とは、富士山に見立てた人工の塚のことで、ここに登ることで、誰でも富士登拝と同様のご利益が得られるとされています。

 江戸時代に大流行した富士信仰ですが、経済的にも体力的にも富士登拝を実現できなかった人々が、どうしても富士山に登りたいという思いから築かれた富士塚。ここ鳩森八幡宮の富士塚は、高さ六メートル。数ある富士塚の中でも本物を忠実に復元していると言われ、現存する富士塚の中で実際に富士登拝が体験できる都内最古のものです。二百年以上時が流れた今でもその姿をできるだけ当時のまま残し、大切に守られてきたことは、実際に登ってみると実感できますが、周りの景色は変わっても、この場所はずっと変わらずにいたのだろうなぁと思うと不思議な気持ちになります。

 四季折々の植物が目に優しく、緑が美しい境内には、ちょっと休憩するベンチがいくつか設置され、いつもゆっくりとした時間が流れています。都会のど真ん中に位置するこの神社は、私も頻繁に訪れるとても居心地の良い心のオアシス。駅からも程よい距離なので、これからの季節お散歩がてらお出かけされてみてはいかがでしょうか。お隣には将棋を愛する人の聖地・将棋会館があり、境内には将棋堂もあります。実際私も遭遇したことがありますが、有名棋士も参拝されるようなので将棋好きな方にもオススメです。 文・河越梨江

鳩森八幡神社

渋谷区千駄ヶ谷一丁目一の二四

■交通

JR千駄ヶ谷駅より徒歩五分
東京メトロ北参道駅より徒歩五分