連載記事「神社仏閣巡りの旅 〜トライベルライター河越理恵の旅行手記〜」第45回


 今回ご紹介するのは、宮城県塩竈市にあります志波彦神社・鹽竈(しおがま)神社です。ここは全国にある鹽竈神社の総本社で、千二百年以上の歴史を持つ東北を代表する古社。陸奥國一之宮として崇敬を集め、奥州藤原氏や伊達政宗ら東北の権力者からも厚い信仰されてきた由緒ある神社です。左宮拝殿に武甕槌神(たけみかづちのかみ)右拝殿には経津主神(ふつぬしかみ)と、左右宮には権力者に崇められた武神を、別宮拝殿には、製塩法を人々に教えたとされる塩土老翁神(しおつちのおぢのかみ)をお祀りし、塩の神・安産の神として庶民の信仰を集めています。東北なので雪の中の参拝も神秘的かもしれませんが、ここ鹽竈神社に参拝するなら、4月下旬から見頃を迎える天然記念物「鹽竈桜」は、一見の価値ありです。ポコッポコっと弾けるように咲く桜は、後世にも残したい地球の宝物。

 実は、私にとって馴染み深いのは、以前勤務していた会社の近くにあった都内港区新橋の鹽竈神社です。こちらは1695年(元禄8年)に伊達政宗のひ孫にあたる、四代藩主伊達綱村が、領内(塩竈市)にある鹽竈神社本社から分霊を勧請して、伊達家上屋敷に創建したのがはじまりで、その後江戸後期、十三代藩主伊達慶邦によって一般庶民にも開放され、安産の神様として信仰を集め現在に至ります。長い歴を振り返っても、それまでできなかったことが可能になる日は来る。このコロナ禍の中、何かと不自由はありますが、来年の春は、自由に行き来できていることを祈り、今はそれぞれにできることに万全をつくしたいですね。
文・河越 理恵


志波彦神社・鹽竈神社
宮城県塩竈市一森山
JR本塩釜駅から徒歩15分