連載記事 [神社仏閣巡りの旅 〜トライベルライター河越理恵の旅行手記〜]第42回



今回ご紹介するのは、秋田県大仙市にあります唐松(からまつ)神社です。ここは、「古事記」や「日本書紀」にご興味がある方なら、一度は耳にしたことのある蘇我氏と物部氏。その物部さんがここの宮司さんであり、唐松神社の御祭神は、長い間歴史の表舞台から姿を消していた邇芸速日命(にぎはやひのみこと)です。邇芸速日命とは、物部氏の祖神と言われている神様で、密かに最近脚光を浴びています。

参拝すると、樹齢300年を超えるといわれる杉並木が迎えてくれるのですが、その参道の先にある本殿は、階段を下りて参拝するという全国でもとても珍しい造りです。階段を下る本殿の造りと邇芸速日命。単純にただ昔の人がこうしたかったのか、意図的にこうせざる得ない事情があったのかなどなど、いろいろと想像が膨らみますし、写真でご覧いただけるように、まるーく石を敷き詰め不思議な形をした築山に佇む「天日宮(あまつひのみや)」も、一風変わった造りで謎は深まるばかりです。

しかし、実際訪れ本殿の前で手を合わせるだけで、いらっしゃる と感じる重厚感は、おどろおどろしく怖いものではありません。優しく大きくただそこに在るという暖かいもので、その空気感は、本殿を取り囲む木々や、天日宮が纏う異次元級の不思議な開放感も含め、疲れた私たちの心を十分に癒してくれます。

復活をとげた神様もいらっしゃるように、今、時代が大きく変化し、いろいろな価値観も変わろうとしています。外出もままならずストレスもありますが、古い価値観に縛られず、新しい時代に柔軟に対応できる自分でありたいです。文・河越理恵



唐松神社
秋田県大仙市協和境字下台84
JR羽後境駅から徒歩15分
秋田道協和ICより車で10分