第6回 街の新聞販売所長に聞く

四つ木立石専売所 石川満 所長
 
下町の代表格、葛飾区の南西に位置する、立石・四つ木地域。京成押上線の四ツ木駅と京成立石駅の真ん中辺り、平和橋通り沿いにあるのが「四つ木立石専売所」です。
 今年の2月に所長に就任して、9カ月めに入ったばかりの石川所長を訪ねました。
 所長は、元々は四つ木立石専売所の従業員として働いていて、キャリアは10年を越えます。ですが昨年に、前所長が勇退されたので所長を引き継いたのです。
 新聞業界に入ったのは、他紙の販売所からのスタートでした。この時点で所長は30代でした。実は所長は、18歳から30歳を超えるまで、体調が芳しくないご両親に付きっきりだったそうです。ですが願いかなわず、お母様が他界し、続いてお父様も天に召されました。働き盛りとも言える時期を看病に費やした所長は、何の仕事をしたらいいのか呆然とされた時期もあったようです。
 ですが、以前から親交のあった知人の方が新聞販売所を紹介して下さり、仕事を始められたそうです。
 今や業界経験は15年を越え、満を持しての所長就任となりました。

 店舗体制は所長の他、従業員さんが6名と、前所長もサポートとして顔を出して下さるとか。
 従業員さんも長期勤務の方が多く、お客様とはすっかり顔なじみです。だからこそ所長は、集金業務でお客様のところに伺う際は「1件に時間をかけていいから、ゆっくりお客さんと話すように」と教えています。そのせいか、集金から戻ってきたらお客様から頂いた食べ物や衣服が事務所のテーブルに山積みになることも……。
 そして所長は、従業員さんがお客様から聞いた話を伝えてもらいます。こうすることでお客様の現状が共有されるとともに、従業員さんとのコミュニケーションにもなるのは一石二鳥ですね。
 所長は従業員さんの営業活動について「2時間行ったら一旦戻ってきて休んでいい」と決めています。ご自身がこの仕事を始めた当初、人見知りな性格で苦労されたことから、仕事は集中してやるのが大切なので、長く続けると従業員さんの疲労も、気持ちの負担も大きいからと考えてのことだそうです。
 苦手だった営業を経験されて「いい意味で意気込まないで人と話せるようになった」とお話し頂きました。
 そして仕事以外でも、所長は普段から従業員さんたちの話をよく聞いています。30代の従業員さんが音楽好きで、オススメされたらその楽曲を聞き、20代の従業員さんから人気のテレビアニメを勧められたらそれを探しては見たりと、知らない世界にも足を踏み入れます。今年若者の文化として大きな話題になったアニメ「ラブライブ!」「けものフレンズ」までご覧になったとか。
 この地域は都市計画が進められているため、転居を余儀なくされる方もいて人口は減少傾向にあります。ですがお客様の中には90歳をすぎても元気に自転車に乗っている方も多いと聞きましたので頼もしい限りです。
 基本的には所長はお店にいますが、外出される際には前所長にお願いするなど、必ず店に誰かいるように心がけています。「新聞は毎日はいらないんだよなあ……」と欲しいときだけ買いに来られるお客様も、四つ木立石専売所の大切なお客様です。  (取材・坂本みゆ)

店舗情報
産経新聞 四つ木立石専売所
〒124-0014 葛飾区東四つ木4-44-8 
TEL 03-3697-0201