【北区】~中世の田楽を継承した子どもたちが雅やかに躍る~ 北区指定無形民俗文化財「王子田楽」奉納

~中世の田楽を継承した子どもたちが雅やかに躍る~ 北区指定無形民俗文化財「王子田楽」奉納



 8月6日(日)、王子神社(王子本町1-1-12)で、魔事(まじ)災難(さいなん)除けを祈願する『王子田楽』が区内の小中学生8名によって奉納された。
 『王子田楽』は戦争の影響で40年間途絶えていたが、地元の人々の尽力により昭和58年に復興。昭和62年には「北区指定無形民俗文化財」に指定された。
 色鮮やかな花笠をかぶり「舞(まい)童(わらわ)」となった子どもたちは鼓(つづみ)や筰(ささら)*1、小太鼓を持ち、笛や太鼓の音に合わせ、地面から湧き出る魔を踏み鎮める意味を込めて上下に跳ねるなど「田楽(でんがく)舞(まい)」を雅やかに披露。1年間の稽古に励み、伝統を受け継いで見事に躍りきった子どもたちには、約300人の観衆から惜しみない拍手が送られていた。



 『王子田楽』は、王子神社の例大祭にともなって神前に奉納される躍りで、始まりは鎌倉時代まで遡るといわれている。一般に「田楽」が五穀豊穣を祈念する芸能色が強いものであるのに対し、王子田楽の躍りは魔事災難除けを祈願し、儀式色が濃い所作であるという大きな特徴がある。戦争中の昭和19年から途絶えていたが、昭和58年に地元の人々の熱意と努力により復興。その後、王子田楽が毎年奉納され、昭和62年には北区指定無形民俗文化財に指定された。
 この日、王子田楽の舞童を演じたのは区内の小学3年生から中学1年生までの児童生徒8名。約1年間、火曜・土曜の毎週2回集まり、熱心に稽古に励んできた。色鮮やかな花笠を被り、衣装を着けた子どもたちは、北区役所第四庁舎前から王子神社まで、武者や神官、氏子総代らとともに列をなして歩く。そして、同神社の鳥居の前でお祓いを受け、中世芸能の特徴を色濃く伝える「中門口(ちゅうもんぐち)*2」を参道で躍った後、舞台に上がって躍りを披露。鼓や筰、小太鼓を持ち、笛や大太鼓のリードにあわせ、二列になって陣形を変えながら輪になったり上下に跳ねたりと、雅やかに躍り、舞童の役目を見事に果たした。
 川崎市在住の30代男性は「初めて観に来ましたが、上下に跳ねる所作がとても可愛らしかったです。中世芸能がこうして現在まで受け継がれているのは本当にすごい。なかなかできる経験ではないと思うので、子どもたちにはしっかりと躍りきったことを誇りに思ってほしい」と話してくれた。
 王子田楽衆の代表・高木基雄氏は「王子田楽は、芸能の基本要素がしっかりと伝承されているので評価が高く、日本一の形式美に優れた田楽と自負しています。年々、舞童の担い手は集まりにくくなってきていますが、今後も後世に伝えていけるように励んでいきたい」と話した。