【江戸川区】“涼を楽しむ和の風情”伝件統名工芸品「つりしのぶ」出荷 まもなく最盛期

“涼を楽しむ和の風情”伝件統名工芸品「つりしのぶ」出荷 まもなく最盛期



撮影日時 平成29年6月15日(木)午前11時頃
場  所 萬園(よろずえん/江戸川区松島 1-32-11/3651-3465)
写  真 つりしのぶを作る深野さん、つりしのぶの剪定を行う様子

 軒下などに吊り下げて夏の涼を演出する江戸の伝統工芸品「つりしのぶ」。本格的な出荷を前に、専業でつりしのぶを生産する「萬園(よろずえん/松島1)」では連日、園内にずらりと並んだつりしのぶの水やりや剪定などの仕上げ作業が続いています。
 つりしのぶは、カットした竹にヤマゴケを巻き付けた芯材にシダ植物の一種であるシノブの根茎をはわせた観葉植物。コケに水を含ませると、乾燥に強く寒い冬を耐え忍ぶことから名付けられた「シノブ」が青々とした葉を茂らせ、涼を運びます。江戸時代の庭師たちがお得意様へのお中元用に作ったのが始まりとされており、明治から昭和初期には一般家庭にも定着。東京の下町でも、家の軒下に吊り下げられたつりしのぶが人々の目を楽しませていました。昭和20~30年代には区内でも約20軒が生産していたものの、シノブの生息する山地の減少とシノブ採集者の高齢化等により、その数は年々減少。現在では、同園が都内で唯一の専業生産者として、つりしのぶを作り続けています。
 昭和10年から続く同園で現在つりしのぶを生産しているのは、深野晃正(ふかのてるまさ/76歳/区指定無形文化財)さん。同園の二代目で、先代である父親の手伝いをしながら60年以上に亘りつりしのぶの生産に携わってきました。昭和30~40年代の最盛期には、先代と2人で年間約10,000個を生産。現在は年間で約3,000個と生産数は減少したものの、長年にわたり受け継がれてきた深野さんの技術・技能は高く評価されており、平成22年には都優秀技術者知事賞を受賞しています。
 同園で生産されるつりしのぶは、芯材を「井」の字に組んだ「イゲタ」や杉の葉を束ねて球状にした「しのぶ玉 酒林(さかばやし)」など全部で約40種類。昔ながらの吊り下げて楽しむタイプやインテリアとしてテーブル上に飾れる置き型タイプなど形も大きさもさまざまで、価格も2,000円台から数万円まで幅広く取り揃えてあります。中でも一番人気は、井桁に組み合わせた木材の中にシノブを入れた「井戸(税込2,700円)」。例年、売り上げ全体の約3割を占める看板商品で、今季も約1,000個を生産し出荷します。その他、産学公プロジェクトで今年新たに誕生した9種のデザインの人気も上々。芯材をハート型に象った「どきどきっ(税込5,184円)」や鯉が泳ぐ様子を表現した「こい偲ぶ(税込6,480円)」など、見た目もネーミングもユニークなものが揃っています。



 深野さんは「マンションの増加で軒がない家が増えたこともあり、部屋の中でも楽しめるコンパクトなものが人気。自分が好きなデザインを見つけて楽しんでほしい」と話しています。
 同園では、今月いっぱい生産を行い、首都圏を中心にデパートなどで展示販売を行います。直販も可。その他、江戸川区の名産品を販売するWebサイト「えどコレ!」でも購入することができます。(えどコレ!URL http://www.rakuten.ne.jp/gold/meipro/