第1回 街の新聞販売所長に聞く


吾嬬町専売所・押上曳舟SC 齋藤崇久所長

 東武亀戸線・小村井駅から徒歩10分弱の距離に、吾嬬町専売所があります。
 こちらの所長は、昨年9月に赴任されたばかりの齋藤崇久さん。30代後半で、新聞販売所の所長としては若手ですが、所長歴は平成26年9月に初めて店を持ってから、今年で3年目に突入しました。

 店舗は「吾嬬町専売所」の名称ですが、押上・曳舟の地域も引き受け、従業員さんは新聞奨学生1名を含む合計10名で日々の業務に向かっています。
 所長は18歳で上京し、まずは営業職に就きました。早朝から日付が変わるまでお客様の都合で動く苛酷な環境で、1年半で退職されたそうです。「若い頃だから出来たけど……」と当時を振り返ると苦笑いが漏れます。
 20代前半は西荻窪のディスカウントスーパーにアルバイトとして入社。次の仕事が見つかるまでの中継ぎと考えていましたが、オーナー(店長)さんが何店舗か経営をされていて店にあまりいなかったので、半年も経たないうちに所長は副店長に昇格。オーナーさんは経営のイロハを教えてくれました。この仕事をきっかけに、所長は「店舗経営」に興味を持ちます。もとより簿記会計など、税務の専門学校に通っていた時期があったので、その経験も実務に直結していました。やがて店長を仰せつかり、3年勤める頃には店内の品揃えを任されて、業者さんとの交渉も積極的に学びました。
 新聞業界に興味を持ったのは、スーパーにお客さんとして来ていた新聞販売所の所長との雑談でした。
 スーパーのお仕事は不特定多数のお客様をいかにして来店させるか、それを考える日々でした。でも新聞店は勧誘の業務もあれど、購読者という決まったお客様に対するので、より質の良いサービスを提供することができるんじゃないか。そう考えた所長は、33歳のときに新聞業界に飛び込んだのです。
 現在は異業種で得た経験を活かした新聞販売店経営を目指し、お客様に長くおつき合い頂けるよう、厚みのある顧客サービスをと思案中です。
 それにはまず従業員さんの意識改革が必要でした。
 「個人」としてお客様に臨むのではなく、周囲の人から見てもクリーンな関係と分かるように、常に「店の代表」としてお客様に接するのが所長の理想とするところで、時間をかけて話してきたことで従業員さんの成長を実感できているそうです。
 また所長は、ご自身がかつて長時間勤務をしてきた経験から、従業員さんの勤務時間を「6時間」と決めています。配達は深夜2時から6時に行い、お客様の都合に合わせて出向く集金業務や店舗への定例報告を2時間程度で行うというもの。「学生は勉強が本分」の信条をお持ちなので、効率のいい6時間労働は学生さんも働きやすく、先を見据えた店舗経営をされていると感じました。
 所長は面接の際に「新聞奨学生でした」と聞くと、「頑張ってきた人なんだな」と相手への信頼度が増すので奨学生勤務は就職にも有利と話されていました。
 今年チャレンジしたいのは、昨年、一昨年と小規模で行った「おせち食材の配達」の広域展開です。昨年の12月は吾嬬町店に赴任したばかりで慌ただしく、一昨年にお買い上げいただいたお客様へのご案内のみになってしまいましたが、数の子、紅白かまぼこ、いくら漬け等々、特に高齢のお客様には「家まで届けてもらえるのは嬉しい」とご好評をいただいたとお聞きしました。
 配達に行った際に直接お話ができるのはお客様のニーズに触れるチャンスですので、店舗側にもありがたいことなのです。今後もお客様に合った商品やサービスの提供を志されるでしょう。
 現在所長は、向島のご自宅から「キーキー鳴る」という自転車で通勤されていますが、親しい先輩所長からバイクを譲っていただける話があり、通勤だけでなく、お客様への配達業務にもひと役買ってくれそうです。
 話しながら「初めて新聞を配ってから4年経ってないんですね」と、過ぎた年月をいとおしむ姿が印象に残りました。

産経新聞 吾嬬町専売所
〒131-0041 東京都墨田区八広2-54-4
TEL 03-3611-3433