第3回 一食一会〜ごちそうさまが聞きたくて〜


 東武曳舟駅から10分程。向島地区の住宅街を、国道6号に向かい歩いていくと、「OPEN」の旗が風になびくお店を見つけます。朝、旗の文字は、店内で仕事をしている店長さんが、行き交う人に「おはよう」と声をかけてくれているようで、お店の前を通る街の人たちの忙しい朝の気持ちを和ませてくれます。
 お店の名前は、「がじゅまる」。店長さんと娘さんの好きな木からつけた名前なのだと教えてくれました。「ガジュマル」は沖縄ではキジムナーという精霊が宿っていると伝えられ、東北では座敷童のように崇められ、「幸せの木」として知られています。そんな木の意味のとおり、「がじゅまる」は地域の人々の心を幸せで包み安らぎのお店として、地域に根付いているお店です。
 お店のメニューで一番人気は「塩こうじの唐揚げ」。手作りの塩こうじと生姜で味付けをし、麹につけこみ柔らかくなった鶏肉のシンプルな唐揚げです。ジューシーに仕上がった唐揚げは、気づくともう一つ、もう一つと箸がすすんでしまいます。これに、ランチセットは旬の食材を使った小鉢と、毎日仕込み作る昆布と椎茸の出汁を使ったお味噌汁、そして雑穀米のご飯と、食後にはコーヒーか紅茶がつくセットになっています。
 「がじゅまる」のご飯は、親しみのある家庭料理。作り方を聞くと真似できそうなのだけれど、作り手の思いや味付けで旨味が異なる、「お母さんの味」です。料理や店頭に並ぶお菓子は、すべて化学調味料や白砂糖は使用せず、食べる人の身体を考えた手作りの美味しさと、優しさが詰まったご飯なのです。
 お店の中には、一枚板のカウンターと、一間のこたつの部屋。家のようにくつろげる店内を、割烹着姿の穏やかな雰囲気の店長さんが一人で切り盛りしています。お店は、そんな店長さんに会いに、店長さんの食事を食べに、保育園児から老若男女問わず、訪れる人々の心を包む、住宅街の心のオアシスのように憩いの場となっています。
(文:土井 思織)


coffee がじゅまる
住所:東京都墨田区向島4-18-2
TEL:03-3625-2004
営業時間:10:00〜18:00
定休日:水曜日・日曜日